Story
製造部錫製造課
黒田 凌平

鋳物は一つひとつ手作業で作っており、
鋳型づくりや溶かした錫を
流し込む鋳造作業は、
手がけた職人によって
微妙に出来上がりが異なります。
造型の工程のわずかな鋳型のずれにより、
片口側面に偏肉ができ
厚みが変わってしまったり、
湯(溶かした金属)を流す勢いなども
製品の種類や職人によって
やり方が異なったりします。
また、気温や湿度によっても
鋳物の状態が変わります。
それらを見極めながら仕上げ作業で
一定の品質が保てるよう調整しています。
仕上げの工程についても、
大まかな内容は決まっていますが、
仕上げ方法の一つである
バフ研磨も職人一人ひとりが
より早く美しく仕上げれるよう、
やり方を工夫しています。

能作の錫製品はやわらかいため、
バフに鋳物を押し当てる力加減が
重要になります。
研磨紙が新しいと少しの力で
削れすぎてしまうことがあり、
鋳物の状態によって研磨紙を
古いものと使い分けています。
このように自分に合った
使いやすさを追求し
「道具」を育てていくのも
楽しみの一つです。
新しい製品を手がける際にう
まくいかないこともあり、
普段使っているものではない道具で
試したり、
職人同士で話し合ったりして、
最適な仕上げ方法を探っていきます。
使う人のことを常に考え、
手に取ってもらった時の
質感や美しさを大切にし、
一つひとつ丁寧に仕上げています。

製造部錫製造課
黒田 凌平
若手職人を牽引
ものづくりに込める熱い想い
Favorite
職人のお気に入り
<ぐい呑 – SAI>
ぐい呑 – SAIは、表面に
細かな円状の仕上げ加工を施します。
振動を利用し研磨していく
バイブレーション仕上げは、
一つひとつ手作業で研磨していきます。
美しい円弧の模様を描くには、
鋳物に当てる研磨機の
当て具合により変わります。
鋳物が小さいと
研磨機を当てづらいため、
他の製品に比べしっかりと「手」で
作業するのがこの製品です。
手がかかるぶん、
やり遂げた達成感や愛着を感じます。

ぐい呑 – SAI